般若心経の「色即是空、空即是色」は「およそ物質的現象というものは、すべて、実体がないことである。およそ実体がないということは、物質的現象なのである」と訳されている(岩波文庫『般若心経・金剛般若経』P.11より)。
・「色」とは何か?
上記にあるように認識の対象となる物質的存在の総称である。仏教の三界は欲界、色界、無色界からなるが、色界は「欲望は超越したが、物質的条件(色)にとらわれた生物が住む境域」であるとりかいされている(Wikipediaより)。
三界は存在の意識的なレベルであるとして、宇宙の次元構造に例えていえば、3~6次元が欲界、7~10次元が色界、11次元が無色界ということになろう。
・「空」とは何か?
「実体がない、形にならない、形が定まらない」ということ。「空虚、空っぽ」とは意味が異なる。
チベット仏教のある一派は、「空性は、いかなる肯定的論理〔である〕をもってしても弁証不可能であり、否定的論理〔ではない〕によってのみ弁証可能」であると主張していた(ちくま学芸文庫『増補 チベット仏教』p.77より)。
それを裏付けるように、法華経の如来寿量品には、「三界とは、生まれず、死せず、消えず、あらわれず、輪廻せず、涅槃せず、真実でもなく、虚妄でもなく、あるものでもなく、ないものでもなく、ないものでもなく、このあり方でもなく、別のあり方でもなく、虚偽でもなく、真でもない…」との記述がある(中公文庫『大乗仏典5 法華経Ⅱ』P.109より)
要するに、言語的表現が一切できないあり方が「空」なのである。
・「色即是空」と「Everything is Nothing」
小宮氏によると、かつて、サティア・サイババは、「色即是空」に近い趣旨で、「Everything is Nothing」と語っていたという。
この両者は直ちには繋がらないように思える。少なくとも、「Nothing」は全くの虚無ではないと理解する必要がある。おそらく、ここでの「無」のイメージは、物理学が語る宇宙が始まる前のエネルギーに満ちた真空に近いと考えられる。
・アインシュタインの「E=MC^2」と「色即是空」
アインシュタインの有名な方程式「E=MC^2」は、「エネルギー=質量×(光速の2乗)」を意味しているが、言い換えれば、「物質はエネルギーに他ならない」ということである。
仏教的にいえば、エネルギーは「無(=空)」であるといえ、「物質性(=色)は、すなわち、エネルギー(=空)である」(=色即是空)ということになる。